400km上空のISSを3000mmのレンズで狙うとき焦点は何mm動かせばいいか? [ざれごと]
BLOG 晴れ時々スターウォッチング の記事 「1月5日05時52分 北東の空を通過するISS」 で、上空400kmの所にある国際宇宙ステーション(ISS)を合成焦点3000mmの望遠鏡で撮影するお話が書かれています。 「無限遠点にピントを合わせた時に400km上空のISSにもピントが合うのだろうか。」というお題を頂きましたので、勝手に計算してみました。
凸レンズの基本
縮尺は大幅にいい加減ですが、直焦点での撮影を図にしてみました。 ABが被写体、OEがレンズ、CDがカメラのフィルム面またはCCDです。 AB、OE、CDは、それぞれ平行とします。 また、Fは、レンズの焦点です。
凸レンズを通る光路の計算には、二つの性質さえ理解していれば解けます。
- レンズに垂直に入った光は、レンズの焦点を通る。
- レンズの中心を通る光は、直進する。
一つ目の性質をあらわしたのが、Bを出てEを通りFを経由してDに向かう光です。 また、二つ目の性質をあらわしたのが、Bを出てOを経由してDに向かう光です。 結果として、どちらもD点に光が集まるので、ABの像はCDに結像します。 これを実像といいます。
無限遠点を出た光の場合は、すべてレンズに垂直に入射するので、焦点Fに結像します。 今回のお題は、無限遠の時にピントが合う焦点Fからどのくらいフィルム面を離すとピントが合うかという問題に帰着します。
相似な三角形の辺の比を求める
この図で、既知なのはISSまでの距離OA(またはBE)、望遠鏡の焦点距離OFだけです。 一方、求めたいのは、焦点からフィルム面までの距離FCです。 そこで、この図から相似な三角形を見つけて、辺の比を求めていきます。
最初は、三角形EOFと三角形DCFです。 OEとCDが平行なので、この二つの三角形は相似です。 二つの辺の比を求めておきます。
EO : OF = DC : CF … (1)
さらに、三角形OBEと三角形DOCも相似です。
BE : EO = OC : CD … (2)
これら二つの式を変形して、既知な値と求めたい値だけを残します。 (1)と(2)から、OEとCDを消します。
EO / CD = OF / CF = BE / OC … (3)
OC = OF + CF より
OF / CF = BE / ( OF + CF ) … (4)
さらに変形して、
CF * BE = (OF + CF) * OF … (5) CF = (OF ** 2) / (BE - OF) … (6)
これで、既知の値からCFを計算することが出来るようになりました。
実際の値を入れてみる
それでは、実際の値を入れて計算してみます。 BE=400km、OF=3000mm を入れると、 CF=0.0225mm になりました。 また、BE=2000km にすると、 CF=0.0045mm になりました。
結論
400km上空のISSを狙うときには、無限遠の状態からフィルムを数から数十マイクロ・メートル動かすとピントが合うようです。 つまり、無限遠のままで構わないと思って良いでしょう。
恥ずかしながら無限遠点と言う物が、せいぜいピントを合わせなくても良い状態程度しか知らなく、具体的にどうなっているのかまでは知りませんでした。
次回もためになる”ざれごと”お願いします。
by hamayan (2009-01-08 07:49)
無限遠点からの光は、良く引き合いに出される太陽光と同じように平行に入射します。そのため、太陽光を凸レンズで集めた光はすべてレンズに垂直に入り、凸レンズの焦点に集まります。
一方、白熱電球からの光は、ある一点から広がるため、焦点よりも遠いところに光が集まるというわけです。つい最近、中学一年生の理科に出てきた話題です。
厳密には、太陽も無限のかなたにあるわけではないので、平行光線とは言えないのですが、ムシめがねの焦点距離は短いのでムシできます。
by noritan (2009-01-08 08:29)
ああ、なるほど。まず平行光と言う前提があるのですね。
使い捨てカメラなんかは室内でよくピントが合うなぁ。合ってないのかあれは?。
by hamayan (2009-01-08 09:08)