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被写界深度を計算してみた [ざれごと]このエントリーを含むはてなブックマーク#

IssFocus.png

昨日のコメントにあった「使い捨てカメラなんかは室内でよくピントが合うなぁ。」を計算してみました。

そもそも、ピントが合うとはどういうことか

上の図は、ISSを撮影する場合を考えた図です。 今回もこの図をもとに考えていきます。 この図では、B点から出た光は、フィルム上にあるD点に集まっています。 これがピントがあった状態です。

DepthFocus.png

一方、この図は被写体の位置がBからGに移動した場合の図です。 この場合、Gを出発した光の経路は、EとFを経由してDに至るものと、Oを経由してHに至るものに分かれます。 被写体の一点から出発した光が、フィルム上の一点に集まらない状態。 これが、ピンボケです。

実際には、レンズ上のOE間の通り道によって光はDからHまで分散します。 そのため、Hを中心としたぼやけた光となって写ります。 決して、心霊ではありません。

もし、DH間の距離がフィルム上の画素の大きさよりも小さければ、それは、一点に集まったものとして見えるはずです。 そのため、少しぐらいピントがずれていても写真としてみたときには、ピントが合っているように見えます。 このときにBG間に許容できる距離を「被写界深度」と呼んでいます。 「使い捨てカメラなんかは室内でよくピントが合うなぁ。」というのは、「使い捨てカメラは被写界深度が深い。」ということになります。

そこで、本日のお題は、「被写界深度が深くなるのはどんな場合か。」を計算してみます。

相似な三角形を探す

前回同様、相似な三角形を探します。 三角形EOFと三角形DCF、三角形OBEと三角形DOCの二つは、前回同様です。 今回新たに加わるのは、三角形OGEと三角形HOCです。

EO : OF = DC : CF … (1)
BE : EO = OC : CD … (2)
GE : EO = OC : CH … (3)

今回ピンボケの指標にしようとしているのは、フィルム上のDHの距離です。 CH = CD + DH と (3) より、DHの式を求めます。

DH = (EO * CO) / EG - CD
DH = (EO * (CF + FO) - CD * EG) / EG … (4)

(1) より

CF = (CD * FO) / EO … (5)

これを (4) に代入して、

DH = (EO * ((CD * FO) / EO + FO) - CD * EG) / EG
DH = (CD * FO + EO * FO - CD * EG) / EG
DH = (CD * (FO - EG) + EO * FO) / EG … (6)

(2) および (5) より

CD = (EO * CO) / BE
CD = (EO * (CF + FO)) / BE
CD = (EO * ((CD * FO) / EO + FO)) / BE
CD = FO * (CD + EO) / BE
BE * CD = FO * CD + EO * FO
CD = EO * FO / (BE - FO) … (7)

これを (6)に代入して、

DH = ((EO * FO / (BE - FO)) * (FO - EG) + EO * FO) / EG
DH = FO * EO * ((FO - EG) / (BE - FO) + 1) / EG
DH = FO * EO * (FO - EG + BE - FO) / (BE - FO) / EG
DH = FO * EO * BG / ((BE - FO) * (BE - BG)) … (8)

やっと、計算できました。

計算式の意味

順番にそれぞれの項の意味を考えていきます。 一つ目は、 "FO" です。 これは、レンズの焦点距離をあらわしています。 つまり、レンズの焦点距離が長いほど、ボケやすいという事を意味しています。 一般に望遠レンズのほうがボケやすいと言われています。 カメラのレンズでは、"f=32mm"というふうに表示されています。

二つ目は、 "EO" です。 これは、レンズの半径を表しています。 レンズの口径が大きいほど、ボケやすいということです。 レンズの口径は、カメラのレンズに"1:2.8"などと表現されています。 これは、焦点距離に対するレンズの口径という意味です。 例えば、「f=135mm 1:2.8」のレンズの場合、口径は 135 / 2.8 = 48.2[mm] と計算できます。

また、 "EO" は、光が通ることが出来る半径という側面も持っています。 これは、実際のレンズでは、絞りと呼ばれています。 絞りは、"F=10"というふうに表示され、焦点距離に対する割合を意味しています。 例えば、"f=32mm F=10"の場合、絞りはレンズの口径に換算して 32 / 10 = 3.2 [mm] と計算できます。 F値は、口径に反比例するので、F値を大きくする、すなわち絞りを絞るほどボケにくくなります。

三番目の項 "BG" は、被写界深度そのものを表しています。 ピントの合う位置B点からの距離にほぼ比例して像がボケます。

四番目の項 "(BE - FO)" は、被写体との距離とレンズの焦点距離の差です。 通常の風景やポートレート撮影などでは、被写体までの距離はレンズの焦点距離に比べて十分に大きいので、この項は、ほぼ "BE" に等しくなります。 その場合には、被写体までの距離に比例してボケにくくなります。

一方、接写などのように、被写体までの距離が短く、焦点距離が無視できなくなった場合には、注意が必要です。 被写体までの距離が極端に近くなると、ピントが合いにくくなってしまいます。

五番目の項 "(BE - BG)" は、ピントが合う範囲の最もレンズに近い被写体までの距離を表します。 これも、被写界深度を深くするために "BG" が大きくなるとボケやすくなる要素になるので、注意が必要です。

本日の結論

以上、式の意味を考えてみましたが、ここから導き出される「ピントが合う写真の撮り方」は、以下の通りです。

  1. 焦点距離を短くする。

    焦点距離の短いレンズを使えば、ピントの合う範囲が広くなり、ピンボケを防ぐことができます。 ズームレンズでは、広角端を使えば良いでしょう。

  2. 絞りを絞る。

    F値を大きくすると、ピントの合う範囲が広くなり、ピンボケを防ぐことが出来ます。 ただし、F値が大きくなると光量が不足するため、シャッター・スピードがおそくなり、手ブレしやすくなります。 手ブレを防ぐには、三脚を使うか、高感度なフィルムを使いましょう。

  3. 被写体までの距離をそろえる

    複数の被写体を同時に撮影したい場合には、それぞれの被写体までの距離を極力そろえましょう。 前後に並ばせるなんてもってのほか。 横一列に並べて撮影しましょう。

  4. 被写体までの距離をとる。

    被写体までの距離が短くなると、ボケやすくなります。 被写体までの距離をとりましょう。

と、ピントを合わせるための注意点を書きましたが、これを全部守ると、実につまらない写真が出来上がってしまいます。 撮影者の意図を反映した、必要なところにだけピントの合った写真を撮るためには、絞りを意識して調整してみると面白い写真が撮れます。

ところで、使い捨てカメラは?

話の発端になった「使い捨てカメラ」を忘れておりました。 おそらく「使い捨てカメラ」の代表格であろう写ルンですの仕様を確認してみます。

焦点距離f=32mm一眼レフ・カメラで標準とされているのが、f=50mm なので、これは短い部類に入ります。
レンズ口径F=10このカメラには、絞りという機構がありません。レンズ口径がそのままF値となっています。
シャッタースピード1/140秒レンズの口径を考えると、このシャッター・スピードは決して遅くありません。このままでは、光量が不足してしまいます。
フラッシュ内蔵(有効撮影距離:1m~3m)そこで、光量の不足を補うのが内蔵フラッシュです。ただし、3m先までしか光は届きません。
撮影距離範囲1m~無限遠もちろん、このカメラにはオート・フォーカスなんてついていません。そのため、この仕様が、被写界深度そのものの値になります。被写体までの距離を短く出来ないので、最短距離は1mになっています。

高機能タイプには、シャッター・スピードを速くしたものもあります。 その場合には、通常の ISO400 に比べて、もっと高感度な ISO1600 のフィルムが使われています。 また、最短撮影距離を 0.8m にしたものもありますが、このレンズは、 f=32mm F=14 とさらにレンズの口径が小さくなっています。

逆に夜景をとるために f=32mm F=5.6 というレンズを備えたモデルもありますが、この製品の撮影距離は、 1m~5m となっています。 被写界深度を犠牲にしたのですね。


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コメント 4

hamayan

> 前後に並ばせるなんてもってのほか。 横一列に並べて撮影しましょう。

( ̄ー ̄)

今回も面白かったです。使い捨てカメラにそんな秘密が有ったなんて。

by hamayan (2009-01-09 07:58) 

noritan

昔のカメラには、オート・フォーカスなんて機能はついていませんでしたから、焦点距離が短くて、レンズ口径の小さいカメラが多く存在していました。そういったカメラで写真を撮ると、「パン・フォーカス」と呼ばれる、画面のどこでもピントの合ったメリ・ハリのない写真になってしまいます。今の使い捨てカメラと原理は同じです。

「レンズ口径を小さくする」ための究極の答えが「ピン・ホール・カメラ」です。「ピン・ホール・カメラ」でピントを合わせるためには、穴の大きさを小さくしなくてはなりません。穴を小さくしすぎると、暗くなってしまうので、どのくらいの大きさにするかが鍵になってきます。

私は、大きなレンズの付いたカメラでボケ味を出しながら撮りたいとは思っているのですが、そういうカメラは重いんですよね。

by noritan (2009-01-09 12:43) 

DAI

え~、まだ新年のご挨拶が未だでしたね、

賀正 今年もよろしく

私のカメラは1Kgはあります。いわゆるダンベル状態です。
サブにポケットにはいる様なカメラが欲しいのですが、
今年から、新規事業はむずかしくなっています。
「すね」の補強が重要課題になってます。
by DAI (2009-01-10 00:09) 

noritan

ごていねいに、ありがとうございます。

持ち歩くことを考えたらコンパクト・カメラが便利なのですが、ちょっと凝った写真を撮ろうとすると「やねこい」ので苦労します。特に最近のカメラは、レンズが小さくなりすぎていて、期待さえ持てません。

もう、銀塩一眼レフカメラも当分使っていないので、CCD一眼レフカメラでも導入しようか。

うちも、スネの補強が重要課題です。

by noritan (2009-01-10 11:12) 

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