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LCDモジュールについて考えた (2) [電子工作]このエントリーを含むはてなブックマーク#

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前回の記事で書いたようにLCDモジュールの入力端子にはプルアップが付いていることがわかりました。 5Vの電源で動作しているLCDモジュールでは、プルアップによって入力端子の電圧が5Vまで上がってしまう可能性があります。 今回は、5Vの電源で動作しているLCDモジュールに3.3V電源で動作しているマイコンをつないだら、なにが起こるのか実験します。

実験回路

今回、とりあげたマイコンは、MC9RS08KA8です。 このマイコンは、1.8Vから5.5Vまでの広範囲にわたる電源電圧に対応しています。 今回の実験では、5.0VのACアダプタの電源から3.3Vの3端子レギュレータ"TA48M033"を使用して作った3.3V電源をマイコンに供給しています。 もちろん、LCDモジュールには、5.0V電源を使用しています。

今回の実験は、「LCDモジュールにマイコンを接続したらどうなるか。」というのがテーマなので、マイコン側は「無限ループ」プログラムを実行させてムダに時間をすごさせます。 また、入出力端子の初期設定も行わないので、デフォルトの「プルアップもプルダウンも無い入力」の設定になるはずです。 さらに、この状態でLCDモジュールの入力端子とマイコンの端子との間に流れる電流を検出したいので、これらの端子は1kΩの抵抗でつなぎました。 なお、LCDモジュールの"E"入力だけは、プルアップもプルダウンもされていないため、10kΩの抵抗でプルダウンして、LCDモジュールが動作しないようにしてあります。

端子電圧を確認する

LcdPullupLeak1.png

電源を投入して、各端子の電圧を確認しました。 LCDモジュールの電源電圧が5.09V、マイコンの電源電圧が3.31Vでした。 これらの間につないだ抵抗の両端の電圧は、3.85Vと3.79Vでした。 1kΩの抵抗の両端に60mVの電位差が発生したので、抵抗に流れる電流は、60µAと計算できます。

マイコンの端子は、入力設定になっているはずです。 それなのに、なぜ、電流が流れるのでしょうか。 それは、以前の記事「端子に電源よりも高い電圧を与えると何が起こるか」にも書いたように、寄生ダイオードが存在するからです。 マイコンの端子から電源端子に向かって、寄生ダイオードが存在します。 このダイオードに電流が流れるため、電源電圧3.31Vよりもダイオードの順方向電圧降下分高い3.79Vの電圧がマイコンの端子にあらわれます。

ここでは、寄生ダイオードと書きましたが、入力端子の静電破壊を防ぐ目的で入れられたダイオードが存在する場合もあります。 どちらにしても、定常的に電流を流すように作られたものではありませんので、電流を流し続けると問題が起こる可能性があります。

マイコンの最大定格を確認する

この実験から、マイコンの端子には、3.79Vの電圧がかかっていることが確認されました。 このマイコンの仕様書にある絶対最大定格では、端子の電圧の範囲を-0.3VからVDD+0.3Vと定めてあります。 VDDは電源電圧の意味ですので、この場合の絶対最大定格の最大値は、3.61Vとなります。 つまり、この実験は、「絶対最大定格を超えた使い方をしている悪い例」であると言えます。

絶対最大定格を守るには

それでは、絶対最大定格を守るには、どうしたら良いのでしょうか。

前回の記事で実験したように、LCDモジュールの入力端子を36kΩの抵抗でプルダウンすると、入力端子の電圧は3.1Vよりも低くなります。 この状態でマイコンを接続すれば、マイコンの端子に3.3Vを超える電圧は発生しなくなります。

ところが、この方法では、常に約85µAの電流が流れてしまいます。 LCDモジュールの6本の入力端子を使おうとすると、それだけで0.5mAの電流を消費してしまい、地球に優しくありません。

正式に3.3V電源のマイコンでLCDモジュールを駆動しようとしたら、3.3Vの信号を5Vの信号に変換するレベルシフタが必要です。 具体的には、74HCT04などの入力閾値が低い汎用ロジックを使うとうまくいきます。

MC9RS08KA8を使う場合には、5V電源を使うことも出来るので、簡単に解決することができます。

参考文献

トランジスタ技術 (Transistor Gijutsu) 2008年 07月号 [雑誌]

トランジスタ技術 (Transistor Gijutsu) 2008年 07月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: CQ出版
  • 発売日: 2008/06/10
  • メディア: 雑誌
Interface (インターフェース) 2009年 02月号 [雑誌]

Interface (インターフェース) 2009年 02月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: CQ出版
  • 発売日: 2008/12/25
  • メディア: 雑誌

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コメント 2

gomisai

こんにちは、初めてコメントさせていただきます。
私も、マイコンを3V系で動作させようとしたときに、LCDモジュールが使いにくくなる問題に頭を悩ませていました。このエントリはとても参考になります。

ふと思ったのですが、LCDモジュールをライトオンリーで使い、マイコン側が常にプッシュプル出力をしているときはどうなるのでしょうか?マイコンI/Oのハイサイド側MOSFETには電流が逆流することになりますが、端子電圧は寄生ダイオード経由の場合よりも低くなる気がします。それが絶対最大定格を満たすかどうかはON抵抗しだいですが・・・。

ちなみに私は、ChaNさんが紹介しているコントラスト調節端子に負電源を与える方法をよく使っています。
ELM - LCDモジュールを3Vで使う
http://elm-chan.org/docs/lcd/lcd3v_j.html
by gomisai (2009-01-17 14:57) 

noritan

コメント、ありがとうございます。

> マイコン側が常にプッシュプル出力をしているときはどうなるのでしょうか?
次のテーマは、これで決まりですね。

もっとも、マイコン側の初期設定が終わるまでは、各端子は出力設定にはならないので、「絶対最大定格の精神」からすると、壊れちゃっても仕方が無いと思いますです。

by noritan (2009-01-17 16:13) 

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