ステップアップコンバータ HT77xxA を規格外で使うお話 (9) [電子工作]
いい感じに白色LEDを点灯させることができるようになったので,効率について考えてみることにしました.
この記事は,メーカが想定している使用例に従わない方法で半導体を使用した,私の個人的な実験メモです.このようにメーカが推奨しない使い方をした場合,結果について誰も保証することはできません.そのため,ご自身の責任の範囲で実験する以外の用途には使用なさらないでください.また,この記事で述べた使い方について,メーカに質問することもご遠慮ください.
入出力の電力を測定するために
効率は,出力電力の入力電力に対する割合と定義されます.今回の装置の場合,入力としてニッケル水素電池を使用し,出力には白色LEDを4個直列にしています.電力は,それぞれの電圧と流れる電流の積で求まります.手持ちのハンディ・テスタで電流を測定すると,無視できない電圧降下が発生するので,抵抗を挿入し,その抵抗での電圧降下を測定して電流値としました.
電力測定のために,このような回路を組みました.電源には,ニッケル水素電池を一個使用しています.入力電流は,1.0Ωの抵抗での電圧降下により測定します.また,出力電流は,カレントミラーの10Ω抵抗での電圧降下によって測定します.入出力の電力と効率は,以下のように計算されます.
LEDに流れる電流は7.9mAとそれほど明るいわけでもなく,効率も高くはありません.VOUT
端子の電圧が,5.0Vに遠く及ばないことから,ニッケル水素電池一個の電圧では,必要な電力を供給できていない事が考えられます.
ニッケル水素電池を二個にしてみた
入力電圧が足りていないようなので,ニッケル水素電池を二個直列にして,電圧を上げてみました.
電圧が低いときに比べて,入力電流が少なくなっていることがわかります.にもかかわらず,出力電流は大幅に増加しています.この回路でも効率を計算してみました.
このように,効率は50%を超えました.出力電流も20mAとかなり明るくなっているので,十分に実用的です.
白色LEDを並列に接続したら
ここまで,HT7750Aを規格外で使用してきましたが,基本にもどって,規格に沿って使用すると,どのくらいの効率になるかを測定してみました.
これが,電力測定に使用した回路です.まずは,電源にニッケル水素電池一個を使用しました.HT7750Aで5.0Vの電圧を発生させて,47Ωの電流制限抵抗付きの白色LEDを並列に並べてあります.LEDの電圧降下が3.1V程度なので,47Ωの抵抗を付けるとLED一つあたり40mAを超える電流が流れる計算になります.ところが,それほどの出力電流は流せないらしく,そこそこの電流が流れました.
それぞれのLEDが消費する電力を出力電力として計算してみました.
項目 | #1 | #2 | #3 | #4 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|
抵抗電圧降下 (V) | 0.49 | 0.46 | 0.45 | 0.48 | - |
消費電流 (mA) | 10.4 | 9.8 | 9.6 | 10.2 | 40.0 |
LED電圧降下 (V) | 3.05 | 3.08 | 3.09 | 3.06 | - |
消費電力 (mW) | 31.7 | 30.2 | 29.7 | 31.2 | 123 |
入出力電力と効率は,以下のようになります.
次にニッケル水素電池を2個直列にしてみました.
ニッケル水素電池一個の場合に比べると,景気良く電流が流れますが,やはり,出力電圧は5.0Vに達していません.入出力電力と効率は,以下のようになります.
電源電圧が高くなると,HT7750Aの出力電圧も高くなり,結果として,電流制限抵抗での電力消費が増えて効率を落としてしまうことがわかりました.
考察
これまで,HT77xxAを使用して,LEDを定電流駆動することができないかとがんばってきたのですが,電流制限抵抗を使用した方が電力効率では優れているようだという結果となってしまいました.もうちょっと,工夫できないかな.
参考文献
定本 トランジスタ回路の設計―増幅回路技術を実験を通してやさしく解析
- 作者: 鈴木 雅臣
- 出版社/メーカー: CQ出版
- 発売日: 1991/12
- メディア: 単行本
定本 続トランジスタ回路の設計―FET パワーMOS スイッチング回路を実験で解析
- 作者: 鈴木 雅臣
- 出版社/メーカー: CQ出版
- 発売日: 1992/12
- メディア: 単行本
コメント 0